大判例

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京都地方裁判所 昭和25年(タ)10号 判決

原告 山本みつ

被告 山本正一 (いずれも仮名)

一、主  文

原告と被告とを離婚する。

原被告間の二男憲四郎三女知永子三男竜造四男湖造の親権者を原告とする。

被告は原告に対し京都市中京区猪熊通六角下ル六角猪熊町六百十二番地原告現住家屋に対する賃貸人訴外鳥居庫吉賃借人被告なる賃借権を讓渡せよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は主文同旨の判決を求め其の請求原因として、原被告は大正十三年八月四日婚姻同棲し其の間四男三女を儲け長女は他家に嫁し二女は病死し現在四男一女は原告と共に原告肩書住所に同居して居り其の中長男を除く四名は何れも未成年者である。被告は婚姻間もなく放蕩に耽り家庭を顧みず昭和二十二年四月頃訴外渡辺俊子と他に同棲していたが更に昭和二十四年十一月頃よりは訴外中井好子と被告肩書住所に於て同棲し家庭を顧みず其の間支拂場所を原告肩書住所とする手形を濫発して借財を爲し債権者より原告に対し支拂請求を受けるのみならず競輪競馬等に熱中し賭場にも出入し居り原告等に対し厘毛の生活費の授助もせず却て時々原告居住の処に來て原告と長男の賃仕事で漸く糊口を凌いでいるに過ぎない原告に対し金の無心を爲し之に應じない時は暴行を働き之が爲め打撲傷を受けたことは其の数を知らぬ程である。此の如き被告の所爲は民法第七百七十條第一項第一、二、五号に該当するから之を原因として原被告の離婚を請求し且未成年者たる主文第二項掲記の子女に対しては右の如き事情から被告は親権者たるの適性を欠き且子女も原告の監護教育を受けることを熱望しているので原告を其の親権者とする旨の裁判並に被告家を現在に至る迄維持し且子女を教育して來たのは一に原告の努力によるものであるところ被告は現在資産なく現在原告の居住している京都市中京区猪熊通り六角下ル六角猪熊町六百十二番地上の家屋を訴外鳥居庫吉より借受けているが昭和二十二年以來他に別居して居るから右家屋の賃借権は必要でなく原告は仕事の関係上此家屋を是非必要とするので財産分與として被告より原告に対し右賃借権を讓渡する旨の裁判を各求める爲め本訴に及ぶ旨陳述した。<立証省略>

被告は適式の呼出を受け乍ら本件口頭弁論期日に出頭せず且答弁書其の他準備書面を提出しない。

三、理  由

当裁判所の眞正に成立したものと認める甲第一号証戸籍謄本によると原被告は大正十三年八月四日婚姻し其の間に四男三女を儲け主文第二項掲記の三男一女は未成年者なる事実を認めることが出來る。

而して証人鳥居マツ、戸口英造の各証言、原告本人訊問の結果を綜合すると原告は被告と婚姻同棲して以來主として原告の呉服掛継なる賃仕事よりの收入で被告一家の家計を支え子女を養育して來たものであり、被告自身の收入は挙げて之を自分の道樂に費消し家庭を顧みなかつたのであり其間被告は他に情婦を作り慇懃を通ずるを常とし女を替えること八回にも及び現在は被告肩書中井好子方で同女と同棲して居る始末であつて時々原告方に帰つて來るがそれは專ら賭博や競馬、競輪等自己の遊びの爲めの金品を要求する爲であり原告が之に應じないと乱暴し物を投げつけたり刄物を持ち出したりして手におえない状態である事実及び被告は原告現住の家屋を被告名義で訴外鳥居より借受けているところの賃借権の外殆ど何等の財産もなく原告は其の呉服掛継なる賃仕事と其の長男の型彫なる賃仕事と双方の收入から漸く糊口を凌いでいるのであるが之等の仕事は得意筋の関係から原告現住家屋を是非共必要とし若し之を失う時は忽ち生活に窮するものであること、並に未成年者たる前記三男一女は被告の行状が右の如くであるので被告を父として慕つていない事実を各認定することが出來る。

右に述べた様な事実は民法第七百七十條第一項第一号に云う配偶者に不貞の行爲があつたとき及び第二号に云う配偶者から惡意で遺棄されたとき及び第五号に云う其の他婚姻を継続し難い重大な事由あるときの何れにも該当すること勿論であつて原告の離婚請求は理由があるから之を認容し又原告の未成年者たる子女に対する親権者の指定及び財産分與の申立も右認定の如き事情の下に於ては之を各原告主張通り指定し又は財産の分與を命ずるのが相当であると認められる。

仍て訴訟費用に付き民事訴訟法第八十九條を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 宅間達彦)

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